画家でもあり、陶芸家でもあり、美食家でもあり、書家でもある北大路魯山人は、当家の18代目当主と親交があり、しばしば当家を訪れた。 そんな中で、こんな逸話がある。
ある日のこと、厨房をのぞいた魯山人が、息子の19代目当主が焚いている“ごりの飴焚き”をつまんで、 「これは甘すぎや」と言ったことに対し、19代目は、「甘ない。これが、平八の味や。」と言い切った。当時、美食家として有名になっていた料理人として 大先輩の魯山人に、それだけのことが言えたのは、それが、うちの味だと確信していたからなのだろう。18代目当主の還暦の祝いに、魯山人が持ってきてくれたのは、一筆の書だった。“とろろやの主ねばって六十年平八繁昌子孫萬采”の書は、 今も宝として大切に残しております。